五十肩を悪化させやすい行動10選

五十肩の痛みで悩んでいませんか?早く治したいと願う気持ちとは裏腹に、無意識の行動が症状を悪化させ、回復を遅らせているかもしれません。この記事では、五十肩の痛みを長引かせる「しては駄目な行動10選」を具体的に解説。無理な動作や自己流のケアが炎症を悪化させるなど、避けるべき理由も明確にします。さらに、早期回復のために実践すべき適切な対処法もご紹介。正しい知識で、五十肩の苦痛から一日も早く解放されましょう。

目次

1. 五十肩とは?なぜ「悪化させやすい行動」があるのか

「五十肩」という言葉は広く知られていますが、その正式名称は「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」と言い、一般的に40代から60代の方に多く見られる肩の痛みと動きの制限を伴う疾患です。肩関節を構成する骨や軟骨、腱、靭帯、関節を包む関節包やその周囲の組織に炎症が起こることで発症します。

この五十肩において「悪化させやすい行動」があるのは、炎症を起こしている肩関節にさらなる負担をかけたり、不適切な刺激を与えたりすることで、症状が悪化したり、回復が遅れたりするリスクがあるためです。無理な動きや間違ったケアは、痛みを増強させ、関節の可動域をさらに狭め、日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。早く症状を改善し、快適な生活を取り戻すためには、避けるべき行動を正しく理解することが重要になります。

1.1 五十肩の基本的な症状と進行段階

五十肩の症状は進行度によって変化し、一般的には次の3つの段階を経て回復に向かいます。ただし、経過には個人差があり、期間も異なります。

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段階主な症状特徴
急性期
(炎症期)
患部に熱感や腫れ
肩を動かそうとすると激痛
安静時にもズキズキとした強い痛み
夜間痛(特に寝返り時や寝ている間に痛みで目が覚める)
肩関節の可動域が徐々に制限され始める
発症から数週間から数ヶ月続くことが多く、炎症が最も強く、痛みが中心となる時期です。この時期は無理な動きが炎症を悪化させるため、特に注意が必要です。
慢性期
(拘縮期)
肩関節の動きが著しく制限される
痛みは急性期より軽減します
腕を上げたり、後ろに回したりすることが困難になる 日常生活での動作(洗髪、着替え、結帯動作など)に支障が出る
急性期の痛みが引いた後に続く時期で、肩関節周囲の組織が硬くなり、関節の動きが固まってしまうのが特徴です。この時期に適切なリハビリを行わないと、可動域の制限が残る可能性があります。
回復期
(解凍期)
痛みはさらに軽減していく
肩関節の可動域が徐々に改善していく
拘縮が徐々に解消され、肩の動きが改善していく時期です。焦らず、地道なリハビリテーションを継続することが重要となります。

1.2 五十肩を悪化させないためのポイント

五十肩の症状を悪化させないためには、いくつかの重要なポイントがあります。

  • 炎症の悪化を防ぐ
    特に急性期において、無理な動作や過度な刺激は、肩関節周囲の炎症をさらに強めてしまいます。炎症が強まると痛みが増し、回復が遅れる原因となります。
  • 組織損傷の拡大を防ぐ
    肩関節の周囲には、腱板(けんばん)と呼ばれる重要な筋肉の腱や、関節を包んでいる関節包などがあります。無理な動きはこれらの組織に過度な負担をかけ、微細な損傷を広げたり、新たな損傷を引き起こしたりする可能性があります。
  • 痛みの悪循環を断ち切る
    痛みがあると、人は無意識にその部位をかばおうとします。しかし、過度にかばいすぎたり、逆に痛みを我慢して無理に動かしたりすると、筋肉が緊張し血行が悪くなり、さらに痛みを増強させる悪循環に陥ることがあります。
  • 回復の遅延を防ぐ
    不適切な対処は、五十肩の回復期間を不必要に長引かせることがあります。適切な時期に適切なケアを行うことで、早期回復を目指すことができます。
  • 二次的な問題の予防
    肩の痛みをかばうことで、首や背中、腰など他の部位に負担がかかり、新たな痛みを引き起こすことがあります。また、長期間の痛みや生活の制限は、精神的なストレスにもつながりかねません。

これらの理由から、適切な対処法を選択することが、痛みの軽減、症状の改善、そして早期回復へとつながります。

2. 五十肩を悪化させやすい行動10選

1 痛みを我慢して無理に腕を動かすこと

五十肩の症状が出始めた際、「動かさないと固まってしまう」という不安から、痛みを我慢して無理に腕を動かし過ぎてしまうと、炎症をさらに悪化させ回復を遅らせる場合があります。

特に急性期と呼ばれる痛みが強い時期には、肩関節周囲の組織に炎症が起きている状態です。無理に動かすことで炎症部位にさらなる刺激が加わり、痛みが強くなる可能性があります。

無理な運動が炎症を悪化させるメカニズム

肩関節は、複数の筋肉や腱によって支えられています。五十肩では、これらの筋肉や周囲の関節を包む袋に炎症や拘縮が生じることが特徴です。

  • 炎症の増強
    無理な動きが患部への刺激となり、炎症性物質の放出を促し、痛みがさらに強くなります。
  • 組織の損傷
    炎症を起こし脆くなった腱や関節を包む袋が、無理な力で損傷する可能性があります。
  • 筋肉の過緊張
    痛みから無意識に肩周りの筋肉が緊張し、血行不良を引き起こし、痛みをさらに増幅させます。

基本的に痛みを感じる動作は避け、まずは炎症を鎮めるため安静を保つことが重要です。

2 重いものを持つこと

日常生活において、重いものを持ち上げる動作は避けられない場面も多いと思います。しかし、五十肩を患っている時に、重いものを持ち上げることは肩関節に負担をかけ、痛みを悪化させる可能性があるため避けたい動作です。

買い物袋、お子さん、お孫さんを抱き上げる、家具を移動させるなどの動作でも、肩関節には予想以上の負荷がかかります。特に、五十肩で弱っている肩の筋肉や腱に力が加わると、炎症が再燃したり筋肉や腱の微細な損傷が悪化したりするリスクがあります。

肩関節への過度な負担とその影響

肩の関節は人体で最も可動域の広い関節ですが、その分不安定な構造でもあります。五十肩では、この関節の周囲組織が炎症を起こし、柔軟性が失われています。そのような状態で重いものを持つと以下のような悪影響が生じます。

  • 筋肉などの負荷
    重いものを持ち上げる際、肩を安定させるための筋肉が強く収縮します。炎症を起こしている筋肉や腱にこの負荷がかかると、痛みが強くなったり、さらに損傷が進んだりします。
  • 関節包んでいる袋の伸張
    炎症をおこしている関節を包んでいる袋が、引き伸ばされることで痛みが誘発します。
  • 姿勢の悪化
    重いものを持つ際に、無意識に肩をすくめたり、猫背になったりすることで、肩周りの筋肉に不均衡な負担がかかり、血行不良や痛みの増強につながります。
  • 炎症の再燃
    一度落ち着いたかに見えた炎症が、過度な負担によって再び活発化し、痛みがぶり返すことがあります。

重いものを持つ必要がある場合は、可能なかぎり痛くない方の腕や両腕を使い、体全体で支えるように意識し、可能な限り肩への負担を軽減しましょう。

3 急なひねり動作や腕を大きく振ること

五十肩の症状があるときに、急激なひねり動作や、腕を大きく振るような動作は、肩関節に大きなストレスを与え、痛みを悪化させる原因となります。

例えば、スポーツ(ゴルフのスイング、野球の投球など)、急な振り返り、戸棚の物を取る、掃除機をかける、洗濯物を干すといった日常的な動作でも、無意識のうちに肩を大きく使ってしまうことがあります。このような動作は、肩関節の中で衝突(インピンジメント)を引き起こしやすく、炎症部位に直接的な刺激を与えてしまいます。

  • インピンジメント症候群の誘発
    腕を大きく上げる動作やひねる動作は、肩の骨と腱などが内部で衝突しやすくなります。五十肩で炎症を起こしている腱板がさらに圧迫されることで、痛みが強まります。
  • 関節包の損傷
    硬くなっている関節包が、急な動きによって無理に引き伸ばされ、微細な損傷や炎症の悪化につながります。
  • 筋肉の過負荷
    急な動作は、肩周りの筋肉に瞬間的に大きな負荷をかけます。これにより、筋肉が緊張し、血行不良や痛みの増強を招きます。

症状が軽く痛みがあっても、ある程度動かせるからとゴルフやバレーなどを続けてしまうと、改善が遅れたり、悪化する可能性が高くなります。その結果、改善するまでに余計な時間がかかってしまうこともあります。無理をせず、適切なケアと休養を取り入れることが早期回復につながります。

4 痛い部分を冷やし続けること(慢性期の場合)

五十肩の痛みが強いときに「冷やすべきか、温めるべきか」と迷う人は少なくありません。
一般的に、急性期(痛い部分に熱感など)にはアイシングが有効な場合がありますが、慢性期に冷やし続けることは、回復を遅らせる事につながります。

慢性期に痛い部分を冷やし続けると、血行が悪くなり、筋肉などがさらに硬くなってしまいます。これにより、痛みが改善しにくくなるだけでなく、肩の可動域制限がより強くなる可能性があります。

急性期と慢性期での対処法の違いを理解し、適切なケアを行うことが重要です。

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時期症状の特徴推奨される対処法避けるべき行動
急性期患部に熱感や腫れ
肩を動かすと激痛
ズキズキとした強い痛み、
安静時も痛い
寝ると痛みが強くなる
冷やす
安静、痛み止め
無理な動作や運動
温めること(炎症を悪化させる可能性)
慢性期熱感や腫れはない
不意の動作で激痛
鈍い痛み重だるさ
肩のこわばりを感じる
特定の動きで痛い
温める
軽いストレッチ、リハビリ
患部を冷やし続けること(血行不良を招く)

これらの判断基準はあくまで目安です。症状は個人差が大きく時期が混在することもあります。

5 長時間同じ姿勢でいること

デスクワークやスマートフォンの長時間使用など、長時間同じ姿勢でいることは、肩周りの筋肉が硬くなり血行不良を引き起こし、五十肩の痛みを悪化させることがあります。

特に、猫背などの姿勢は、肩甲骨が外側に開き肩の関節が体の内側にひねられた状態になります。
この姿勢が長く続くと、肩の周りの筋肉が常に緊張し血流が悪くなります。結果として、疲労物質が蓄積し痛みが誘発されたり、痛みが強くなる原因となります。

  • 筋肉の硬直
    同じ姿勢が続くと、筋肉が動かされずに硬くなり柔軟性が失われます。
  • 血行不良
    筋肉が硬くなると血管を圧迫し血流が悪くなります。これにより、酸素や栄養が十分に供給されず、老廃物が蓄積しやすくなります。
  • 姿勢の悪化
    肩への負担を避けるために無意識に不自然な姿勢を取り続けることで、さらに他の部位にも負担がかかり、全身のバランスが崩れることがあります。

定期的に休憩を取り、肩甲骨を動かすストレッチや軽い体操を行うことで、筋肉の緊張をほぐし血行を促進しましょう。意識的に姿勢を正すことも大切です。

6 手先を使う作業や動作

五十肩の症状がある方にとって、草抜き庭仕事車の運転料理などの「手をよく使う作業や動作」は注意が必要です。実は、こうした動作が痛みの悪化や改善の遅れにつながることが多くあります

  • 手から肩は筋膜などでつながっている
    手や腕を使うと、その力がつながっている筋膜や筋肉を通して肩にも伝わります。
  • 肩関節に余計な負担がかかる
    草抜きのような繰り返し動作は、炎症や硬さが残っている肩にストレスを与えやすいです。

五十肩の改善を早めるためには、手先を酷使する作業や動作をなるべく控えることが大切です。無理に作業を続けると回復が遅れる可能性が高いため、症状が落ち着くまでは、家族などのサポートを受けて無理をしないようにしましょう。

7 不適切な睡眠姿勢で肩に負担をかけること

1日の約3分の1を占める睡眠時間は、身体の回復にとって非常に重要です。しかし、睡眠中の姿勢が悪いと肩に負担がかかり、痛みの悪化や夜間痛の原因になることがあります。
痛みが強い場合には、無意識に痛い方の肩を下にしてしまい目が覚め、睡眠の質がさらに低下します。
痛みが軽い場合でも、痛い肩を下にして眠ることで症状が悪化することがあります。

  • 血行不良
    圧迫によって肩周りの血流が悪くなると、痛み物質などの代謝が低下、酸素などの供給が妨げられる事で痛みがより強くなります。
  • 関節のねじれ
    腕をおでこに乗せるような姿勢は、肩関節がねじれた状態になり、痛みを悪化させる可能性があります。

仰向け(上向き)で寝ることを基本とし、痛い方の肩に負担がかからないようにクッションや抱き枕などを活用して、快適な睡眠姿勢を見つけることが大切です。

8 自己判断で五十肩を放置すること

「そのうち治るだろう」「年齢のせいだから仕方ない」と自己判断し、五十肩の症状を放置することは、症状の長期化や、肩の動きの制限が残ることがあります。

五十肩は自然に治ることもありますが、多くの場合、適切な処置やリハビリを行わないと、数ヶ月から数年単位で痛みが続き、最終的に肩の動く範囲が著しく制限されてしまうことがあります。一度固まってしまった関節を元に戻すには、より時間と労力が必要となります。

  • 症状の慢性化
    放置することで痛みが慢性化します。
  • 動きの制限
    動かさない期間が長くなると、関節を包んでいる袋や周囲の軟部組織がさらに硬くなり、肩の動きが長期的に制限されてしまいます。これは「凍結肩」と呼ばれる状態です。
  • 日常生活への影響
    肩の動きが制限されることで、着替え、洗髪、料理など、日常生活のあらゆる動作に支障をきたし、生活の質が著しく低下します。
  • 精神的負担
    長引く痛みや不便さから、ストレスやうつ状態に陥ることもあります。

9 過度な飲酒や喫煙を続けること

過度な飲酒や喫煙は、全身の血行を悪化させ、炎症を助長する作用があるため五十肩の改善を遅らせる事になります。

  • 血行不良
    ニコチンは血管を収縮させ、血流を悪化させます。
  • 炎症の悪化
    血行不良により、炎症性物質の除去が遅れたりすることで、炎症が長引く要因となる可能性があります。
    アルコールを飲みすぎると、体内で炎症を起こす物質が増え痛みが強くなる可能性が高まります。
  • 組織修復の遅延
    酸素や栄養が十分に供給されないと、損傷した組織の修復が遅れ回復が長引きます。
  • 骨密度の低下(喫煙)
    喫煙は骨密度の低下を招く可能性が多くの研究で示されており、関節・骨の健康全体に悪影響を及ぼすことが懸念されています。

五十肩の回復を早めるためには、過度な飲酒や喫煙を控え、血行を良好に保つことが重要です。禁煙や節酒は、五十肩だけでなく、全身の健康にとっても良い影響をもたらします。

10 ストレスを溜め込み精神的負担を増やすこと

五十肩の痛みは、身体的な問題だけでなく精神的なストレスとも密接に関係しています。

痛みによる不自由さ、夜間痛による睡眠不足、仕事や日常生活への支障など、五十肩は多くのストレスを引き起こします。このようなストレスは、自律神経のバランスを乱し以下のような悪影響を及ぼします。

  • 痛みの増強
    痛みを感じやすくする作用があり、少しの刺激でも強い痛みとして認識されやすくなります。
  • 筋肉の緊張
    首や肩まわりの筋肉を無意識に緊張させ、血流を悪化させることで痛みやこりを引き起こします。
  • 回復の遅延
    ストレスにより分泌されるホルモンは免疫機能を弱め、炎症の回復を遅らせる可能性があります。
  • 睡眠の質の低下
    睡眠の質を下げ、体の修復や炎症の回復を妨げることがあります。

五十肩の回復には、心身をリラックスさせる時間を持つことが大切です。痛みが強いときは難しいかもしれませんが、軽い運動や趣味、入浴、睡眠など、自分に合った方法を無理のない範囲で取り入れストレスを少しでも解消しましょう。

4. まとめ

五十肩の痛みは、無理な動作や自己流のケア、自己判断で放置することで悪化する可能性があります。
本記事で紹介した「悪化させやすい行動」を意識して頂けると幸いです。
つらい肩の痛みでお悩みの方は、お気軽に当院までご相談ください。

この記事がご参考になりましたら、ご家族やご友人など、お困りの方にシェアして頂けたら幸いです。
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